言葉にして表現することは、目標に近づく1つの方法
日本のオリックスで9年間、アメリカ大リーグで19年間、通算28年間も日米のプロ野球で活躍したイチロー選手が2019年3月21日の試合を最後に引退発表しました。
イチロー選手の数々の前人未到の記録は今更申し上げるまでもありません。しかし、その長い野球人生において超一流の心得は大いに学ぶことがあります。
『言葉にして表現することは、目標に近づく1つの方法ではないか』
日本人は「不言実行」を尊ぶ傾向があると言われます。しかし、何も言わなければ、何もしなくても他の人にはわかりません。
逆に行動目標を言葉にすることにより、自分自身にプレッシャーを与え続けることができます。
イチロー選手は、『最低50歳まで現役』と公言していました。結果45歳で引退となってしまいましたが、その言葉があればこそ普通では考えられない長い間、一流プレイヤーとして現役ができたことと思います。
自ら“有言不実行の男”と揶揄しましたが、そうなるリスクを承知で公言していたのでしょう。実績を積み上げるほど、「できなかったときのことを考えて身動きが取れない」「周囲から叱咤激励されにくくなる」ことを踏まえ、周囲を巻き込む形でセルフコーチングしていた様子が伝わってきました。
『やってみたいなら挑戦すればいい』
「誰かにこれをやってみようよ」と誘うと「それをやればどうなるのか?成功するのかどうか?」などと結果として成功する保証を求める人がいます。
イチロー選手は、自他で判断基準の分かれがちな“成功”という言葉に振り回されるのではなく、「挑戦するかしないか」「後悔するかしないか」という観点で行動してきたのでしょう。
だからイチロー選手は、他者から見た判断基準である地位や名誉よりも、自分の心と向き合うことに徹し、その結果として地位や名誉を得られたのです。
アメリカの国民性には、一生懸命頑張っている人を無条件に応援する姿勢があります。人種や性別に関わらずそんな人が成功すると一緒に応援する姿勢。というより一緒に楽しんでいる感じがしますね。
何か努力するとき成功したり失敗することはあります。しかし、それを蔑んだり妬んだりすることはありません。むしろ一緒に関わろうとすることで楽しむことができます。
ポジティブ思考が大事ですね。
『この体験は未来の自分にとって大きな支えになるんだよ』
「野球が楽しくなる瞬間はあったか?」
というポジティブな質問に「やはり力以上の評価をされるのは、とても苦しい。
もちろんやりがいがあって、達成感を味わうこと、満足感を味わうことはたくさんありました。しかし、『楽しいか』というと、それとは違います」とネガティブなコメントを返しました。
「かつて『孤独感を感じてプレーしている』と言っていたが、ずっとそうだったか?」
というネガティブな質問に対しては、「現在それはまったくないですね。アメリカでは、僕は外国人ですから。外国人になったことで人の心をおもんばかったり、痛みがわかったり、今までなかった自分が現れたんですよね。体験しないと自分の中からは生まれないので、孤独を感じて苦しんだことは多々ありましたが、『この体験は未来の自分にとって大きな支えになるんだよ』と今は思います」とポジティブなコメントを返しました。
「ポジティブもネガティブも表裏一体であり、それがビジネスの醍醐味」という真理
それは、「もし今、みなさんにネガティブなことがあったとしても、ポジティブなことも得られるはずなので、ともに頑張っていきましょう」とエールを送っているようにも感じられます。
イチロー選手の何気ない言葉、
『夢がかなうと、別の夢を見たくなるのが人間の性(さが)』
『その新たな夢は、目の前のことに向き合わなければ実現しない』
イチロー選手は、夢の大切さだけでなく、それにこだわり続けることの無用さを言いたかったのではないでしょうか。
2019年3月1日に愛知県立春日井高等学校同窓会に入会された第55期全日制312名、並びに第52期定時制14名の同窓生の皆さんへ、あらためて4月からはじまる新しい人生のお祝いのことばとさせていただきます。