TOPICS 2019年度お知らせ 同窓会55周年特別企画 特集コラム

もうひとつのONE TEAM

日本を熱狂させたラグビーワールドカップ

令和元年の流行語大賞にラグビー日本代表のスローガン「ONE TEAM」が選ばれました。みなさんご存知のとおりラグビーワールドカップ2019ジャパンで日本代表は、グループプールリーグを突破、史上初のベスト8に進出しました。その代表メンバーは、ニュージーランド出身のリーチ・マイケル主将を筆頭に、日本、トンガ、南アフリカ、サモア、韓国、オーストラリアとさまざまな出身国の選手で構成されています。
さらに日本代表を率いるジョセフHCもニュージーランド出身です。出身国や人種を越えて一丸となって強敵に立ち向かう姿は、日本のみならず世界各国で驚きと称賛の声で讃えられました。

 

ラグビーワールドカップに関わる世界各国の人々

今回、ラグビーワールドカップ2019で映像制作と世界配信の仕事に携わることになり準備期間を含めて約2か月半、外国の人とともに過ごしました。
それは、仕事としてはたいへんでしたがユニークで貴重な体験でした。
本大会は、フランス本社の映像制作会社により世界200カ国以上に配信され、日本のNHKをはじめすべての放送局はここからの映像を使用しています。いまやラグビーW杯は、累計42億人以上もの人が視聴するスポーツコンテンツとして成長しました。
アイルランド、ダブリンに本部を置くワールドラグビーの国際競技連盟は、すべての国に正しく平等に試合映像が配信するために世界基準を満たした映像制作、映像配信を運営管理しています。
そのため、映像制作や各スタジアムからの配信設備、各国の配信基準を満たす技術スタッフはいろいろな国の人々で構成されています。

 

果樹園を営むドイツのスパイダーカムの技術者

今大会の試合をテレビで観戦された方は、真上から映し出されるスクラムの映像や、ピッチでプレーする選手を追いかけるようなカメラワークの映像をご覧になって新鮮な驚きを感じたことと思います。
それは、「スパイダーカム」という空中特殊映像機材で撮影された映像で、2000年にドイツで開発されました。今大会のラグビーだけでなく、サッカーワールドカップやテニスの全豪、全仏オープン、音楽イベントなどでも使用されています。
トヨタスタジアムにもドイツからスパイダーカムの技術者が数人やってきました。空港からスタジアムまでの間、彼らは日本文化や日本の食べ物、温泉観光について楽しそうに話していました。
チームリーダーのヨアキム・クラグマンさんに尋ねました。

 

― ドイツのどこの都市から来たのですか?
ヨアキム:ハンブルグだよ。エルベ川の南側のアルテスラントで果樹園をやっているんだ。
リンゴや洋ナシ、プラム、サクランボなどを栽培しているよ。春になるとピンク色の花が一斉に咲いてとてもきれいだ。ぜひ、一度観においでよ。
― えぇっ!? 果樹園ですか?スパイダーカムのエンジニアが本業じゃないんですか?
ヨアキム:どちらも本業さ。サッカーやラグビーのスポーツ映像制作で世界のいろんな国に行くのは大好きさ。もちろん、自分の果樹園を世話することも大事な仕事なんだ。
― 同じチームのエリオット・ルナックさんや、パトリック・バイデアルトさんも果樹園をやっているのですか?
エリオット:僕たちは、ミュンヘンで市街地の環境美化計画のデザインをしているよ。
世界各国の市街地を見ることはとても勉強になるよ。もちろん日本の京都や鎌倉の歴史建造物もとても興味深いよ。別府の温泉も最高だ。
― 試合は明後日だけど、試合後はどこに行くの?
ヨアキム:俺たちはスパイダーカムのワイヤー設営とカメラコントロールの確認ができたら明日の夜には横浜の会場に行くよ。
― ウェールズ×ジョージア戦の試合は観ないのですか?
エリオット:試合当日は、別のオペレータが明日、大分からくるよ。僕たち設営技術チームは、次の試合までにメンテナンスをしなきゃいけないんだ。
― それは、残念ですね。せっかく設営したカメラ映像で試合が見れないなんて。
ヨアキム:そうだね。でも、横浜でもトヨタの映像は観れるし、ほかの会場の試合もマルチ回線で確認できるから心配ないよ。
― ラグビーワールドカップが終わったらドイツに帰るのですか?
ヨアキム:ああ、そうだね。リンゴや洋ナシの収穫があるからね。でも来年の東京オリンピックはまた日本に来るさ。
― 東京オリンピックは、ラグビーの映像制作ですか?
ヨアキム:いや、シンクロナイズスイミング競技さ。室内プールの天井からカメラを移動させて撮影するよ。真上からシンクロの競技を撮影することはとても重要なんだ。
ビールが大好きで仕事が終わったら、トヨタのヤキトリを食べたいと言っていたドイツの映像制作チーム。
翌日「三河安城駅」まで送ると駅のレストラン街で「手羽先の山ちゃん」を見つけると喜んで「ここのチキンとビールは最高だよ。」と笑って握手しました。

トヨタの日没を待つのは?

今大会の映像制作クルーのひとりニコラス・コステロさんはニュージーランドから来た映像制作チーフです。大会当日の夕方、ベニューマネージャーから至急、ニコラスさんをトヨタスタジアムの外観が撮影できる場所に連れて行ってほしいと連絡がありました。
南アフリカ×ナミビア戦の試合のオープニングでトヨタスタジアムのライトアップされる様子を撮影したいとのことでした。
あらかじめ目安をつけた丘の上に車で向かうとニコラスさんは、「うーん、ここではスタジアム全体が撮れないなぁ。どこかもっと高い場所はないかいっしょに探して欲しい。」と言いました。車で付近を走行しているとニコラスさんは「あそこだ!」といきなり叫んで建物の立体駐車場の屋上を指さしました。それは、丘の上のパチンコ店の立体駐車場でした。
僕たちは撮影できるかどうかわからないけどとりあえず行ってみることにしました。駐車場の屋上まで車で上がるとトヨタスタジアムの全景が見渡せる場所でした。

 
ニコラスさんは車の屋根によじ登るとカメラ機材や三脚を渡してくれるように言いました。
「無断で撮影するとやっかいだからさっさと撮影したらここから出よう。」と言うと、
「了解。でも日没した後、スタジアムのライトアップされた瞬間までぜひ撮りたいんだ。」
ニコラスさんはカメラを構えて待ち続けました。
20分以上待ち続けているとパチンコ店の店員がやってきました。
「ここで何をやってるんだ?許可はとっているのか?」
ニコラスさんは、にっこり笑うと「僕たちは怪しいものじゃない。撮影が終わればすぐ退出することから少しだけ待ってくれるようにお願いしてほしい」と言いました。
「トヨタスタジアムの試合前のライトアップされる様子を撮っているんです。我々はラグビーワールドカップのオフィシャルの撮影班です。ここからの映像は全世界で放映されます。」
「えぇ?!ほんとうですか?うちの店から撮った映像が放送されるなんてそれは凄い!どうぞ好きなだけ撮ってください。」
その後、店員は店長や店のスタッフまで連れてきて撮影のようすを見ていました。
そのうち日没となり、トヨタスタジアム全体がライトアップされました。
ニコラスさんは撮り終えるとみんなに「サンキュー、サンキュー」と言って機材の片づけをはじめました。
パチンコ店のお店の方はみんな「よかった。よかった。また、いつでも撮りにきてください。」と喜んでいました。
僕たちはお礼を言って店を後にしました。
ニコラスさんは、「トヨタのサンセットは特別だよ。」と喜んでいました。

 

東京五輪に向けてグローバル化する日本

トヨタスタジアムの映像制作チームは、イギリスやフランス、オーストラリア、ベルギー、マレーシア、タイ、中国、UAE、南アフリカなどいろんな国のスタッフで構成されています。
みんなフレンドリーで日本のことが大好きでともに助け合いながらラグビーワールドカップの世界配信をやり遂げました。
ロンドンのスタッフは、試合前日にポスターを作ってホテルの近くのカラオケバーでライブステージを演奏しました。
南アフリカのスタッフは、毎晩遅くまでビールを飲みながらみんなで陽気に歌っていました。ホテルのすぐそばのコンビニは毎晩、総勢100名以上の海外スタッフがビールを買いに来るのですぐに売り切れになりました。
マレーシアのスタッフがリハーサル中にけがをしたときは、各国のスタッフが病院に駆けつけて治療が終わるまで夜遅くまで心配そうに様子を見守っていました。
海外から各国のサポーターが多数来日し、世界各国の選手で編成されたラグビーの代表チームを応援する。その試合映像を世界各国のスタッフが配信する。
来年の東京オリンピックに向けて日本はどんどん国際化することでしょう。
そして、お互いを尊重して理解しあうこと。いろんなことを話して冗談言って笑ったり、いっしょに食事をしたりすることから新しい「ONE TEAM」が始まるかもしれません。

今年の10月、愛知県立春日井高等学校同窓会は55周年記念事業として映画「シンプルギフト」の上映会を行いました。
この作品は、日本の子供たちとアフリカのウガンダの子供たち、そしてともにブロードウェイをめざすイギリスやアメリカのスタッフたちを描いています。
それは、まさに「ONE TEAM」の姿でもあります。
 

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